いつでも休めて、いつでも働ける社会を──少子化対策を“自分ごと”に
少子化についての議論は、もう何年も前から続いています。ニュースやコラム、講演会などでさまざまな意見に触れてきたものの、どこかしっくりこない。それは自分の中で腑に落ちる視点が持てなかったからかもしれません。
でも、この本『まちがいだらけの少子化対策』(天野馨南子 著)を読んで、ようやく「これか」と思える感覚が得られました。
出生率の“数字のトリック”に気づかされた
まず冒頭から驚かされたのが、よく耳にする“出生率”の定義についてです。私はずっと「子どもを持つ人が減ったから出生率が低い」と思っていましたが、それは大きな誤解でした。実は、日本の出生率というのは未婚の女性も含めた全女性の平均。つまり、結婚していない人が増えれば増えるほど、当然のようにこの数字は下がるわけです。
さらに、結婚している夫婦が持つ子どもの数自体は、そんなに大きく減っていないことも紹介されています。じゃあ、何が問題なのか?──それは婚姻数が激減していることでした。
「結婚したくない」んじゃなくて「できない」だけ?
興味深かったのは、「若者は結婚したがらない」というイメージもまた誤解であること。実際には、多くの人が「いずれは結婚したい」と考えている。なのに、現実には結婚できない。そこには、経済的な不安や働き方の厳しさといった障壁があることが見えてきます。
だったら、「結婚したいけど難しい」と感じている人の気持ちに寄り添う政策が必要なはずです。もう、“自己責任”で片付けられる時代じゃない。今こそ、社会全体で「どうすればそれを実現できるのか」を真剣に考えるタイミングだと感じました。
私たち世代こそ、価値観をアップデートする必要がある
この本を読み進めながら感じたのは、「家庭」や「子育て」の理想像が、私たちの育った時代から大きく変わっているということ。それなのに、政策を決める側や企業のトップが、古い価値観のままで動いていたら、少子化対策なんてうまくいくわけがありません。
私自身、経営者という立場にいますが、正直この本を読んでかなり反省しました。制度を整えるだけでは足りない。**働く環境の土台から見直さなければ、どんな政策も「絵に描いた餅」**だと痛感しました。
働き方改革は、「育児」も「介護」も前提にして
印象的だったのが、専業主婦世帯よりも共働き世帯の方が子どもの数が多いというデータ。これは、世帯所得が関係していると推測できますが、それと同時に「専業主婦=育児に専念できる理想形」という思い込みも見直す必要があるのでは?と感じました。
そもそも“専業”という概念があまり好きではありません。誰もが、家事やケア労働を担っている。会社に勤めていようが、フリーランスだろうが、親の介護や子育ては生活の一部です。
私は、自分の会社で定年制を10年前に廃止し、「いつでも働けて、いつでも休める」ような家族的経営を目指してきました。人間の脳は、年齢や性別に関係なく、柔軟に働き続けられるはず。これからは、育児も介護も前提にした職場環境が当たり前になってほしいと思います。
「思い込み」を捨てて、次の一歩を
読み終えて一番強く感じたのは、日本社会における少子化の議論が、あまりにも「思い込み」に縛られていたということ。出生率の数字、結婚の意欲、理想の家族像、専業主婦という言葉の扱い…どれも、「本当にそうなの?」と問い直すことで、新しい視点が得られるのだと学びました。
私も経営者の端くれとして、社会の一部として、こうした知識をもとに思索を続けていきたい。少子化対策を「他人ごと」にせず、自分の言葉と行動で関わっていくことが、未来への責任なんじゃないかと思います。

