植物は動けないけど、なぜこんなにも強いのか
『植物は動けないけど強い』北嶋廣敏 著 を読んで
時々、まったく違う世界の本を読みたくなる時があります。
それはきっと、今いる人間社会が狭く感じて、息が詰まるような瞬間です。
今回手に取ったのは、北嶋廣敏さんの『植物は動けないけど強い』。
タイトルの通り、植物はその場に根を張って生きる生き物。だけど、その“動けなさ”が実は戦略であり、知恵であり、強さなのだということが本書から伝わってきました。
見えていなかった植物たちの「生きる戦略」
本書を通して印象的だったのは、植物が驚くほど複雑な方法で環境に適応していることです。
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アカシアの木は、アリに住処とエサを提供し、代わりに自分を食べる昆虫を退治してもらう。
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ガクアジサイは、目立つ装飾花で虫を呼び寄せ、中心にある地味な両性花で受粉を行う。
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セイタカアワダチソウは、他の植物を阻害する化学物質を出しすぎて、ついには自滅する(自家中毒)。
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ツユクサは、虫が来なければおしべとめしべが自ら動いて自家受粉する。
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ザゼンソウや福寿草は、雪の中でも花を咲かせ、体温を上げて昆虫を呼ぶ。
「なんでこんなことができるのか?」と驚くことばかり。
人間よりよほど洗練された戦略で、黙々と命をつなぐ植物たちの姿に感銘を受けました。
動けないからこそ、生き延びる術を研ぎ澄ませる
“動けない=弱い”というのは、人間の思い込みかもしれません。
植物は、あえて動かないことで環境に根ざし、虫や風を味方につけ、他の生き物と共生しながら、長い時間をかけて繁栄してきました。
市場でいえば「レッドオーシャン」を避け、過酷な環境でこそチャンスを見出す——まさにブルーオーシャン戦略のようです。
たとえば、早春の雪の中で咲く福寿草。
なぜそんな寒い時期に?と思っていたけれど、虫の少ない季節だからこそ競争が少ない。
そのタイミングで咲くことで、確実に受粉相手を確保する。
しかも、自分の体温で雪を溶かすことすらできる。
こんな「静かな知性」を持つ植物たちに比べたら、私たち人間の方がよほど不器用に思えてくるのです。
見下ろしていたつもりが、見下ろされていたのかもしれない
この本を読んで、ふと思いました。
「植物は動かないから大変ですね」と思っていたのは、あまりにも人間中心の視点だったなと。
今あなたが庭に植えた小さな苗は、きっとあなたのひ孫よりも長く生きます。
動かず、ただそこに在り続けながら。
せかせかと動き続け、やがて命を終える私たちを、静かに見つめているのかもしれません。
おわりに|たまには“自然の目線”で世界を見てみる
写真撮影が好きな私にとって、植物の生態を知ることは「見る」ことへの深みをくれる時間でした。
ただ咲いているように見える花も、じつは高度な戦略のもとに咲いていたのです。
時々はこんな本を読んで、目線を変えてみるのもいい。
今見ている世界が、少し違って見えてくるから。

