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迷って、悩んで、また歩く。──重松清がそっと寄り添う13の物語を読んで

答えは風のなか──重松清が描く、あの日の自分と誰かのこころ

重松清さんの『答えは風のなか』は、じんわりと心に染みる短編が詰まった一冊でした。
もう何冊も彼の本を読んできたけど、今回もやっぱり「重松ワールド」全開。語り口調のやさしさと、どこかで見たような日常の中にある小さなドラマたち。読むたびに、自分のなかの記憶や感情が呼び起こされて、そっと背中をさすられているような気持ちになります。

そこに“いた”気がする登場人物たち

たとえば、「いいやつ」に出てくる人物たち。あぁ、いたいた。こういう人、学生時代にいたよな〜って思いながら読んでいました。心のどこかに引っかかってたあの人の存在。思い出したくなかった気持ちも、懐かしさと一緒にふわっと蘇ってきました。

「おばあちゃんのメモ」は、コロナ禍という私たちにとってもまだ記憶に新しい日々が背景。多くの家庭で似たような状況があったんじゃないかな。読んでいて、温かさとちょっとした切なさが交差して、泣きそうになりました。

答えが出ないことに向き合う

中でも心に残ったのが「ふるさとツアー」。これはかなり考えさせられました。
地元に住む人たちの葛藤って、ニュースではなかなか語られない部分。でも、実際には“正解がない”中で生きている人がたくさんいて、その心の揺れが丁寧に描かれている。自分の故郷に重ねて読んでしまい、しばらく本を閉じて考え込んでしまいました。

「いちばんきれいな空」では、“多様性”というテーマが昭和育ちの自分にとっては刺さるものがありました。
あの頃にはなかった視点。だけど、今は受け入れて、共に生きるという価値観があってほしい。そう思わせてくれた一編でした。

小説は、他人の人生を生きてみる体験

「ケンタの背中」や「タケオの遠回り」など、自分では経験しようがないような状況にも、ぐっと引き込まれました。
訳あって親子になったり、出自によって疎外されたり。
そんな物語を読むことで、他者の気持ちに一歩近づけた気がします。だから、小説っていいなと思うんです。誰かの視点を通して、自分の中の“偏見”や“区別”にも気づかせてくれる。

読んでいて、何度も「私にもこういう感情、あるかも」と思いました。
そのたびに、自分を責めるのではなく、「そう感じることもあるよね」と受け入れつつ、少しだけ思考を前へ進めてみたくなるんです。

「答えは風のなか」──歩き続けるための読書

この短編集に強く背中を押されるような強烈な言葉は、もしかしたらないのかもしれません。
でも、だからこそ心に残る。まるで、黙って隣に座ってくれている友達みたいに、寄り添ってくれるんです。

最後の「あきらめ禁止」に込められたメッセージも好きでした。
自分の思考に閉じこもってしまうと、答えを探し続けて疲れてしまう。
でも、きっと“正解”じゃなくて、“風のなかにあるヒント”を感じ取ることが大切なんだと気づかされました。

人生は迷って、悩んで、喜んで、そしてまた歩き出すもの。
そんな当たり前だけど忘れがちなことを、そっと思い出させてくれる一冊でした。

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