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「怖れる前に、知る。ヒグマという“神秘”と共に生きる」

「怖い」だけじゃない。ヒグマという存在から見えてきたこと

──『ヒトとヒグマ』(増田隆一)を読んで

最近、熊出没のニュースをよく耳にします。
特に山の近くに住んでいると、「またか…」とちょっと他人事ではいられない。
秋は紅葉を撮りに山に入りたいし、滝の写真も撮りに行きたい。でも、熊に遭遇するかも…そう思うとちょっと怖い。

そんな気持ちで手に取ったのが『ヒトとヒグマ』(増田隆一 著)です。
「熊は怖い」だけで終わらせたくない。そもそもどんな動物なのか?どう人と関わってきたのか?その背景を知ることで、見方が変わるかもしれない。そんな思いで読みました。


ヒグマのリアルな生態に驚きの連続

読み進めるうちに、ヒグマという存在がどんどん立体的に感じられてきました。
まず驚いたのが、200kmを移動することもあるという広大な行動範囲。
そして、雑食性であること。植物も食べるし、エゾシカの幼獣を食べることもある。人が自然環境を変えてしまったことで、熊の食性も変化してしまっているというのです。

特に印象に残ったのは「冬眠」の話。
詳しい説明は本に譲りますが、体の水分を循環させながら何ヶ月も活動を止めるなんて、人間には到底マネできない神秘的なシステムです。
自然界の奇跡というか、思わず「すごい…」とつぶやいてしまいました。


「共存」がテーマになってくる理由

一方で、ヒグマの個体数は増えているとのこと。
北海道などでは、広大な農地に家畜用のデントコーン(トウモロコシ)が栽培されており、ヒグマにとっては手軽に食べ物が手に入る“餌場”になってしまっているそうです。
結果として、森の中よりも人里近くで過ごす「都市型ヒグマ」が生まれてきた。

でも、ただ「危ないから駆除しよう」という話にはしたくない。
本書では、アイヌ民族に伝わるクマ送り儀礼の話も紹介されています。
冬眠から目覚めたヒグマは、カムイ(神)界から地上に降りてくる存在。
その熊を敬い、豊かな肉や毛皮をもたらしてくれることに感謝する文化がある。
それが「クマ送り」です。


感受性と寛容性のバランス

この本でとても共感したのが、「感受性と寛容性」に関する考察。
子どもは好奇心が旺盛で、感受性も高い。でも寛容性はまだ低い。
一方で、大人になると文化的な経験を重ねて寛容性は高まるけれど、感受性は鈍っていく。

この“交差点”のような時期に、ヒグマのような存在と出会い、考え、体験することの大切さ。
なんだか今の社会にもつながる話だなと感じました。


熊を知って、備えるという姿勢

今回この本を読んで、「熊が怖い」という感情の裏にある、“知らないことへの恐れ”に気づきました。
ちゃんと知れば、どう備えるべきかも見えてくる。
そして、ヒグマという存在はただの野生動物ではなく、人間の文化や精神にも深く関わってきた、特別な生き物だということも分かりました。

自然との関わり、異文化との接点、生物多様性の意義。
ヒグマ文化には、そういったさまざまなテーマが凝縮されています。

筆者は「ヒグマ文化は、集団の結束を促し、他文化との絆を強める力がある」と語っていましたが、まさに同感です。
人と自然、人と人との距離感を考え直すヒントがここにはある。

これから紅葉狩りや写真撮影で山に入るときは、熊鈴だけでなく、こうした知識や敬意も一緒に携えていたいと思いました。

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