「やりたいこと」は、感情の小さな扉から始まる
『「やりたいこと」の見つけ方』西 剛志 著を読んだ。冒頭に出てくるトム・ソーヤの言葉が、いきなり深い。
「人生で一番大切な日は2日ある。生まれた日と、なぜ生まれたのか分かった日」。
正直、“なぜ生まれたのか分かった日”なんて本当に来るのかな…と思った。でも読み進めるうちに、「答えが突然ドンと降ってくる」というより、「日々の感情から、じわじわ分かってくる」ものかもしれないと思えてきた。
この本がまず言ってくれて助かったのは、「やりたいことが見つからないのは、あなたのせいじゃない」ということ。今は情報も選択肢も多すぎる。選べるはずなのに、逆に頭が止まってしまう。まさにそれだと思った。だから“やりたいこと”を探すときに、いきなり職業名を決めようとしなくていい。先に見るべきは「自分の感情」だ、と。
やりたいことがある人は、理屈より感覚で決めていることが多いとも書かれていた。条件が少ないときは考えたほうが当たりやすい。でも条件が増えてごちゃごちゃしてくると、考えすぎるほど迷ってズレる。そんなとき直感のほうが役に立つ、という話は納得だった。もちろん直感も“経験”が育てる部分は大きいと思うけど、頭だけで全部決めようとするよりは、体の反応も信じたほうがいいのかもしれない。
怖いのは「自分はこういう人間だ」という思い込みだ。挑戦する前から「どうせ無理」と決めてしまう。そうやって本音にフタをする癖がつくと、だんだん「自分が本当は何を望んでるのか」が分からなくなる。これは身に覚えがある。
それに、私たちは“達成”よりも、“成長してる感じ”のほうが嬉しかったりする。結果より「前に進んでる感覚」が力になる。だから大きな目標を一発で当てるより、少しずつ前に進める形を作るのが大事なんだと思った。
本の中には「外に向かうタイプ」「内に向かうタイプ」という整理も出てくる。人との関わりや場づくりで熱くなる人もいれば、自分の中を掘ることでワクワクする人もいる。どっちが上とかじゃない。ただ比率が違うだけ。
ただ、周りの気持ちばかり優先して、自分の気持ちが置き去りになると、やりたいことは見つかりにくい。逆に自分だけでもダメ。人の意見を聞ける柔らかさと、流されない強さのバランスが大事だ、という話が良かった。
あと印象に残ったのは、コンフォートゾーン(安心な場所)とストレッチゾーン(ちょい不安な場所)の話。やりたいことのヒントは、安心の外側に転がっていることが多い。でも、一歩出てみると、最初は不安でも慣れて「普通」になる。だから、ちょっと面倒なことも、あえてやってみる価値がある。
そして「運がいい人は出会いが多い」という話。ここで言う出会いは、人だけじゃなく、機会や場所も含む。オンラインの時代だからこそ、直接会って得られる空気感とか、言葉にできない学びの価値は上がっている気がする。やりたいことをやっている人と会うと、こちらの考え方まで影響を受ける。だから「会いに行く」って、ただの気合いじゃなく、ちゃんと意味があるんだろう。
さらに面白いのが、「やりたいことが見つかる人ほど寄り道が多い」というところ。最短で行こうとすると視野が狭くなる。でも寄り道は、思いがけない自分を見つけやすい。旅行先でふと気づく、とか、たまたまの会話でスイッチが入る、とか。私も、計画してない動きの中で世界が広がった経験があるから、この話は励みになった。
結局この本は、「やりたいことは“答え”じゃなくて、“育てるもの”」だと背中を押してくれた気がする。自分の心が動くものをよく見て、少しだけ安心の外に出て、出会いと寄り道を増やす。そうやって小さな扉を開けていくうちに、いつか「自分は何のために生きてるんだろう」にも、自分なりの手触りが出てくるのかもしれない。

