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集中しないことが、人間らしさを守るのかもしれない

 

森博嗣著『集中力はいらない』を読んで

この本を読んで、私は少し気が楽になりました。
世の中では、集中することは良いことだと当たり前のように語られます。仕事でも勉強でも、ひとつのことに没頭できる人が優秀だと見られがちです。けれど森博嗣さんは、そこにあえて疑問を投げかけます。

その視点が、今の私にはとても新鮮で、同時によくわかる気がしました。

著者は、機械に任せられる仕事なら機械に任せればいい、人間はもっと自由にならなければいけない、と言います。私はこの言葉に強く頷きました。
AIが広がることで仕事がなくなると不安に思う人は多いですが、私はむしろ、機械に任せられるものを人間が手放せるなら、それは悪いことではないと思っています。人間まで機械のように、速く、正確に、同じことを繰り返す必要はないはずです。

本来、人間の役割は、決められたことをただこなすことではなく、まだ形になっていないものを感じたり、考えたり、寄り道したりすることにあるのではないか。そんなことを、この本は改めて考えさせてくれました。

経営も創作も、少し力を抜いた時に見えてくる

特に印象に残ったのは、本当に新しいものを生み出す人は、一つのことだけに集中しているわけではないという視点です。
成功した人は、一心不乱にひとつのことをやり抜いたように語られることが多いですが、実際にはそうではないのかもしれません。あらゆるものを見て、関係なさそうなものまで受け取りながら、誰も思いつかなかった発想にたどり着いている。私はそんな気がしました。

経営も、まさにそうだと思います。
ひとつの課題だけ見ていれば済む仕事ではありません。市場の流れ、人の気持ち、時代の空気、技術の変化、自分の直感。ばらばらに見えるものを、どこかでつないでいく仕事です。だから、一点だけを見つめる「集中」では拾えないものがある。むしろ、少し頭をゆるめている時のほうが、大事な信号に気づけることがあります。

著者が、創作をする人ほど旅行を好むと書いていることにも共感しました。
場所を変える。空気を変える。頭をリラックスさせる。そうすると、考えようとしていたこととは別の場所から、ふっと何かが浮かんでくる。私自身も、旅に出たり、景色の中に身を置いたり、日常から少し離れたりすることの大切さを感じています。集中していない時間は、決して無駄ではなく、むしろ発想を育てる時間なのだと思います。

比較や反応に流されず、死ぬまで考え続けたい

もうひとつ、この本で深く心に残ったのは、自信を持ちすぎないこと、自分を賢いと思いこまないことの大切さです。
自分を低く見るというと、少し後ろ向きに聞こえるかもしれません。けれど著者の言うそれは、卑下ではなく、問題に向き合うための謙虚さなのだと思います。

年齢を重ねると、経験が増えるぶん、自分なりの答えや型ができてきます。けれどその反面、知らないうちに傲慢さも生まれてしまうのかもしれません。
「自分はもうわかっている」
「こういうものだ」
そう思い始めた瞬間に、人は考えることをやめてしまう。そんな怖さを私は感じました。

さらに今は、比較と反応の時代でもあります。
SNSでは、考えているつもりで、実は反応しているだけの時間が増えやすい。著者の言葉は少し辛辣ですが、たしかにそうだと思いました。反応ばかりしていると、自分の中でじっくり考える時間が減っていきます。

だからこそ私は、この本を読みながら、いかに楽しんで仕事をするか、いかに考える余白を残すかが大事なのだと感じました。
集中して効率を上げることだけが正しいのではない。楽しい時間を削ってまで、無理に集中する必要はない。人は自然の一部で、常に変化している存在です。今の自分と来月の自分は、きっともう少し違っている。その変化を受け入れながら、固まらずに考え続けることのほうが、ずっと大事なのだと思います。

本の最後に近いところで語られる、**「凝り固まるのは死んでからでも遅くない」**という考え方も、とても印象に残りました。
本当にその通りだと思います。人は生きている限り、まだ変われる。まだ考えられる。まだ別の見方ができる。だったら、自分を決めつけず、最後まで考え続けたほうがいい。

AIの時代になって、ますます人間の役割が問われています。
正確さや速さでは、これからもっと機械が強くなるでしょう。けれど、寄り道をすること、ぼんやりすること、比較を手放すこと、そして自分の傲慢さを少しずつ溶かしていくこと。そういうものこそ、人間に残された大切な力なのではないか。

この本は、集中力を否定する本というより、人間らしい思考を取り戻すための本なのだと、私は感じました。

追伸

実は『結局集中力が9割』という本も読んでいます。感想文にはしていませんが、脳の構造から集中力を解き明かしていく内容で、それはそれで興味深く読みました。
ただ、私はどこかで「集中力は良いことだ」と最初から決められているような感じに、少し引っかかっていたのだと思います。だから今回、『集中力はいらない』を読んで、ああ、自分がずっと感じていた違和感はこれだったのか、と腑に落ちるものがありました。

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