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「人は変えられない。だからこそ、自分の立ち位置を見直したい」

—『劣等感と人間関係 アドラー心理学を語る』野田俊作 著を読んで—

人間関係の悩みは、年齢を重ねてもなくならない。
むしろ、仕事でも家庭でも地域でも、関わる人が増えるほど、難しさは深くなるように思う。

『劣等感と人間関係 アドラー心理学を語る』を読んで、あらためて感じたのは、悩みの原因を外に探しすぎると、自分が本当にやるべきことから遠ざかってしまう、ということだった。

「あの人が悪い」「自分はかわいそうだ」と考え始めると、話はどんどん過去へ、あるいは周囲へ広がっていく。
けれど本当に考えるべきことは、もっとシンプルなのだろう。
“私にできることは何か”
この問いに立ち返ることが、アドラー心理学の大事な出発点なのだと感じた。

健康な心は、まず自分を受け入れることから

この本で特に印象に残ったのは、健康なパーソナリティの条件として「自己受容」が語られていたことだ。

自分に足りないところや弱さがある。
それでも、まず自分を受け入れる。
ここが出発点になる。

私たちはつい、もっと立派になってから、もっと評価されてから、自分に価値があると思いたくなる。
けれど、それではいつまでも苦しい。
他人からの承認や条件つきの愛情を求めている限り、心は安定しないのだと思う。

さらに心に残ったのは、
「まず自分が幸福になること」
という考え方だった。

家族のため、社員のため、周囲のため。
もちろんそれは大事だ。
しかし、自分自身が不幸のままでは、その空気を周りに広げてしまうこともある。
自分がまず落ち着き、満たされ、穏やかであること。
それが結果として、いちばん身近な人を支えることにつながる。
この考え方は、きれいごとではなく、とても現実的だと感じた。

人間関係を壊すのは「縦」の意識かもしれない

本書では、怒りや正義感が人間関係を「縦」にしてしまう、という話が出てくる。
これはとても考えさせられた。

怒るとき、人は無意識に自分を上に置き、相手を下に置いている。
正しさを振りかざすときも、同じことが起きやすい。
すると関係は壊れやすくなる。

逆に、よい関係とは「横の関係」であるという。
大人も子どもも、夫婦も、職場の仲間も、役割は違っても人としては平等。
ここを取り違えると、関係はぎくしゃくし始める。

私は経営に関わる立場として、この感覚はとても大切だと思った。
立場上、判断したり指示したりする場面はある。
けれど、役割の違いと人間としての価値の違いを混同してしまうと、組織の空気は一気に悪くなる。
平等とは「同じ」ではない。
能力も経験も役割も違う。
それでも、人としての値打ちは平等である。
この視点を持ち続けるのは、簡単なようで難しい。

「信用」より「信頼」、「干渉」より「協力」

この本では、アドラー的な人間関係の考え方がいくつも対比で語られていた。
その中でも特に印象に残ったのは、
信用ではなく信頼
干渉ではなく協力
という考え方だ。

信用は、相手の行動や実績を見て判断するもの。
一方で信頼は、もっと根本的に、その人の背後にある善意や可能性を見る姿勢なのだと思う。

また、協力とは、頼まれない限り相手の人生に過度に踏み込まないことでもある。
よかれと思って口を出しすぎることは、実は協力ではなく干渉になっていることがある。
これは親子でも夫婦でも、職場でも本当によくある話だと思う。

つい「相手のために」と思って手を出したくなる。
でもそこで一歩引き、相手の課題を相手のものとして尊重すること。
この距離感こそが、成熟した関係をつくるのかもしれない。

不完全な人間同士が、どう付き合うか

この本を読みながら、結局、人間関係に特効薬はないのだと思った。
ただし、持つべき姿勢はある。

全部の人に好かれようとしないこと。
自分の価値観を絶対だと思わないこと。
感情で押し切らず、冷静に話し合うこと。
そして、自分は変えられても他人は変えられないと知ること。

どれも当たり前のようで、実際にはとても難しい。
だからこそ、何度でも立ち返る価値がある。

人間は不完全だ。
自分もそうだし、相手もそうだ。
その前提に立ったうえで、それでもどう付き合っていくか。
そこに人間関係の本当の課題があるのだと思う。

劣等感をなくして完璧になることがゴールではない。
劣等感を抱えたままでも、他人と比べすぎず、自分の立ち位置を見つめ直し、より健康な関係を築こうとすること。
この本は、そのための静かで実践的なヒントをたくさん与えてくれた。

私自身も、つい相手を変えたくなる時がある。
正しさを振りかざしたくなる時もある。
けれどそんな時こそ、まず問うべきなのだろう。

いま、自分にできることは何か。

人間関係を少し良くする入口は、いつもそこから始まるのだと思う。

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