いま、目覚めゆくあなたへ
「自分」を生きるとは何かを問い直す読書
マイケル・A・シンガー著『いま、目覚めゆくあなたへ』を読みながら、私は何度も「自分とは何だろう」と立ち止まりました。
自分と言っても、いつも同じではありません。
機嫌のいい日もあれば、心がざわつく日もある。弱気になる日もあれば、不思議に前向きになれる日もある。では、そのどれが本当の自分なのか。私は年齢を重ねてきた今でも、その問いにすぐ答えることはできません。
けれど、この本はその問いから逃げずに、自分の内側を見つめてみなさいと静かに促してくる一冊でした。
外の世界をどう生きるかではなく、その外の世界を受け止めている「内側」がどうなっているか。そこに目を向けることの大切さを、あらためて考えさせられました。
心の中にも、確かにエネルギーがある
この本で特に印象に残ったのは、人は内側にエネルギーを持って生きている、という考え方でした。
身体が疲れることはよく分かります。けれど心が疲れていることには、案外鈍いものです。何となく気力が湧かない日、感情だけがすり減っていく日、あります。そんなときは食べて休んでも、すぐには回復しないことがある。逆に、何かに感動したとき、人に励まされたとき、あるいは夢中になれるものに出会ったとき、人は驚くほど力が湧いてきます。
私はこの感覚にとても共感しました。
仕事でも、読書でも、写真でもそうです。ただ義務感だけで動いていると、心はだんだん細っていく。けれど「これは面白い」「もう少し知りたい」「この瞬間を残したい」と思えたとき、人はまた動き出せる。
生きる力というのは、単なる体力だけではない。
むしろ、人を前へ進ませるものは、心の奥から湧いてくる見えない力なのだと感じました。私たちは外側のエネルギーには敏感でも、自分の内側で何が詰まり、何が流れているのかには無頓着なのかもしれません。
人は、自分を守るために壁をつくる
この本には、人は自分を守るために心の壁をつくる、とあります。
これもまた、よく分かる気がしました。
傷つきたくない。失敗したくない。否定されたくない。そう思ううちに、人は少しずつ自分の中に囲いをつくっていく。過去の経験や思い込みを積み上げて、「ここから出なければ安全だ」と思ってしまう。
けれど、その壁は自分を守る一方で、光まで遮ってしまう。
この表現は、とても深く胸に残りました。人は年齢を重ねると経験が増える分、守りも強くなります。経営でも人生でも、知らず知らずのうちに「こうあるべき」に縛られてしまうことがある。ですが本当は、そこを少し開いて風を通さないと、新しい景色は見えてこないのだと思います。
私は日々、時代の変化の速さに驚かされます。AIもそうですし、働き方も、人の価値観も大きく変わってきました。そんな時代だからこそ、自分の内側まで固く閉ざしてしまったら、ますます苦しくなる。少しでも心を開いて、流れを受け取ることが大切なのだと感じました。
死を見つめることが、今日を生きる力になる
この本では、死を遠ざけずに見つめることの大切さも語られています。
この部分は、私には特に重く、そして深く響きました。
身近な人の死に触れると、人はどうしても立ち止まります。そして、その人の不在を通して、自分が今ここに生きていることの意味を考え直すことになります。
昨年、私自身もそうした経験をしました。
そのときに感じたのは、死はただ悲しいだけの出来事ではなく、「あなたはどう生きるのか」と問い返してくるものでもある、ということでした。
明日が必ず来るとは限らない。
だから今日を雑に生きてはいけない。
会いたい人には会い、伝えたいことは伝え、やりたいことは少しでも前に進める。
当たり前のようでいて、実はなかなかできないことです。だからこそ、この本は「今」を生きることの大切さを、静かに教えてくれた気がします。
この本を読み終えて感じたのは、「本当の自分を見つける」というより、「自分の中で眠っているものを目覚めさせる」読書だったということです。
すぐに答えが出る本ではありません。
けれど、読んだあとに自分の内側に問いが残る。その問いが、日々の見え方を少しずつ変えていく。そんな本でした。
忙しく生きていると見失いがちな「内なる感覚」を、そっと取り戻させてくれる一冊。
いまの自分をもう一度見つめたい人に、静かに手渡したい本です。

