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学びは、もう始まっている

『学びをやめない生き方入門』中原淳 著を読んで

「学びをやめない生き方入門」という題名を見ると、少し身構える人もいるかもしれません。

これからの時代は学び直しが大事だ。
リスキリングが必要だ。
変化に対応するには学び続けなければならない。

そんな言葉は、今ではあちこちで聞くようになりました。

たしかにその通りだと思います。
時代は大きく変わっています。
仕事のやり方も、情報の取り方も、人とのつながり方も、昔とはまったく違ってきました。

けれど、この本を読みながら、私は少し引っかかるところもありました。

「学ばなくてはいけない」と言われすぎると、かえって学びが重たくなる。
学びとは、本来もっと自然で、もっと軽やかで、もっと自分の中から湧いてくるものではないか。

そんなことを考えながら読みました。


学びは「使わなければならない」ものなのか

本の中では、学びをその場限りにしないことの大切さが語られていました。

セミナーに参加しても、いい話を聞いたで終わってしまう。
研修で得た知識を職場で試さない。
本を読んでも、それが仕事や生活の中でつながっていかない。

たしかに、そういうことはよくあります。

学んだことを実践に結びつける。
経験と知識をつなげる。
過去に学んだことを別の場面で応用する。

これは大事なことだと思います。

ただ、私の感覚では、それは「意識してやらなければならない」というより、問題意識を持っている人間なら自然にそうなるものではないか、とも思いました。

自分の中に本当に気になることがある。
何とかしたい課題がある。
もっと良くしたい仕事がある。
お客様のために考えたいことがある。

そういうものがあると、読んだ本の一節も、見た風景も、人との会話も、自然に自分の中でつながっていきます。

「これはあの仕事に使えるかもしれない」
「この考え方は会社の未来に関係しているかもしれない」
「この土地で見たものは、ものづくりの発想につながるかもしれない」

そうやって、学びは勝手に動き出すものだと思うのです。


私は昔から、知らない場所に首を突っ込むのが好きだった

この本の中には、いつもと違う書店のコーナーに行ってみる、普段読まないジャンルの本を手に取ってみる、異なる土地の文化に触れてみる、という話も出てきます。

これは私も昔から好きでした。

出張に行くとき、ただ仕事先に行って帰るだけではもったいないと思っていました。

その土地の新聞を読んでみる。
地方版の記事を追ってみる。
その地域で何が話題になっているのかを知る。
美術館や歴史的な場所にも足を運んでみる。

そうすると、ただの移動が、急に学びの時間になります。

その土地に暮らす人たちが何を大切にしているのか。
どんな歴史があり、どんな課題があり、どんな空気が流れているのか。

現地に行く前から少しずつ自分の中に入れておくと、その場所に立ったときの見え方が変わります。

これは、勉強というより、好奇心です。

「せっかく行くなら、少しでも深く味わいたい」
「ただ通り過ぎるのではなく、その土地の息づかいに触れてみたい」

そういう気持ちが、自然に学びになっていたのだと思います。


学びは、すでに自分の中にある

この本を読んで、一番共感したのは、最後の方に出てくる「あなたはもうすでに学び始めている」という考え方でした。

疑問を持った時点で、学びは始まっている。
気になった時点で、もう入り口に立っている。
人は本当は、日々の中で何かしら学んでいる。

これはとても大切な視点だと思いました。

「学ばなければならない」と言われると、人は身構えます。
自分はまだ足りない。
もっと勉強しなければならない。
何か新しいことを始めなければならない。

そう思うと、学びは義務になります。

けれど本当は、誰もがすでに学んでいるのだと思います。

仕事で失敗したこと。
人との関係で考えさせられたこと。
旅先で見た風景。
本を読んで少し引っかかった言葉。
SNSで出会った異なる世代の考え。
孫との時間。
写真を撮るときの視線。
会社の未来を考える時間。

それらは全部、学びの種です。

ただ、それに自分で気づいていないだけなのかもしれません。

学びとは、机に向かって何かを覚えることだけではありません。
資格を取ることだけでもありません。
セミナーに参加することだけでもありません。

自分の中に起きた小さな違和感や疑問を、見過ごさないこと。
それが本当の学びの始まりなのだと思います。


押し付けられた学びではなく、自分から湧いてくる学びへ

正直に言えば、この本には少し「学びなさい」と言われているような印象もありました。

もちろん、著者の意図はそうではないと思います。
現代社会の中で、学びを続けることの大切さを伝えようとしている本です。

ただ、私は読みながら、学びは人から押し付けられるものではないと改めて感じました。

学びは、もっと自分の内側から始まるものです。

気になる。
面白そうだ。
これは何だろう。
なぜこうなるのだろう。
自分の仕事に関係するかもしれない。
自分の人生に必要かもしれない。

そういう小さな心の動きが、学びを前に進めます。

そして、その小さな動きに気づける人は、いくつになっても学び続けられるのだと思います。

私は本を読むことが好きです。
旅をすることも好きです。
写真を撮ることも好きです。
新しい技術やAIに触れることも好きです。

それらは別々の趣味や行動のようでいて、実は全部つながっています。

ものづくりにもつながる。
会社の未来にもつながる。
人との関係にもつながる。
自分の人生の見方にもつながる。

そう考えると、学びとは特別な時間ではなく、生き方そのものなのかもしれません。


すでに学んでいる自分から始めればいい

この本を読み終えて、私は「もっと学ばなければ」と思ったというより、「自分はすでに学んできたのだ」と確認できた気がしました。

そして、これからも大げさに構えず、少し気になったものには首を突っ込んでみたいと思います。

いつもと違う本棚を見る。
知らない土地の新聞を読む。
若い人の考えに触れる。
SNSで知らない感性と出会う。
旅先で歴史や文化を感じる。
日々の仕事の中で、小さな違和感を拾う。

そういうことの積み重ねが、学びをやめない生き方なのだと思います。

学びとは、立派なことを始めることではない。
もうすでに始まっている自分の学びに気づくこと。

この本は、私にとって「新しく学びなさい」と背中を押す本というより、これまで自分が自然にやってきた学びを、改めて見つめ直す本になりました。

少し引っかかりながら読む本も、また面白いものです。
すんなり納得するだけが読書ではありません。

違和感もまた、学びの入り口なのだと思います。

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