恥をかきながら、脳をワクワクさせて生きる

荒俣宏さんの『すぐ役に立つものは、すぐに役に立たなくなる』を読んで、まずこの題名に強く惹かれました。
今の時代は、何でも「すぐ役に立つかどうか」で判断されがちです。
仕事に使えるか。
売上につながるか。
効率化できるか。
すぐ成果が出るか。
もちろん、会社を経営している以上、それは大切なことです。
私自身も、AI、IT、ホームページ、SNS、メタバース、3D設計など、役に立つものは積極的に取り入れてきました。
しかし、この本を読みながら改めて思いました。
すぐ役に立つものばかりを追いかけていると、人間の考え方そのものが、どこか薄くなってしまうのではないかと。
人生は、死ぬまで恥のかき通し
この本を読みながら、私自身の70年の人生も重ねて考えていました。
人生なんて、死ぬまで恥のかき通しです。
だから、失敗を気にしても始まらない。
むしろ、恥をかかないように生きようとすると、アウトプットができなくなります。
人前で話すことも、文章を書くことも、写真を発表することも、会社の未来を語ることも、全部どこかに恥ずかしさがあります。
でも、その恥ずかしさを超えて外に出すから、人間は成長するのだと思います。
読書感想文を書くことも同じです。
うまく書こうとすれば、手が止まる。
正しいことを書こうとすれば、言葉が硬くなる。
でも、自分が感じたことを、そのまま少し不器用でも出してみる。
そこにこそ、自分の学びがあるのだと思います。
恋心も、学びの入口になる
本の中で印象的だったのは、肖像画の始まりについての話です。
古代ギリシャの都市国家コリントスに、彫刻家とその娘がいた。
父のもとには多くの弟子が集まり、その中の一人の美しい青年に娘は恋をする。
やがて青年が修行を終えて故郷へ帰ることになり、娘は彼の姿を何とか残したいと願う。
そこで彼を壁の前に立たせ、蝋燭の光で映った横顔の影をなぞった。
それが肖像画の始まりだという話です。
これが本当かどうかというより、私はこの話がとても好きです。
学びや芸術の始まりは、理屈ではない。
「好きだ」
「残したい」
「知りたい」
「近づきたい」
そんな心の動きから始まるのだと思います。
恋心も、好奇心も、憧れも、立派な勉強の入口です。
学校の教科書だけが学びではない。
人を好きになることも、旅に出ることも、写真を撮ることも、知らない世界に触れることも、すべて勉強なのだと思いました。
未知のものに手を出す勇気
荒俣さんは、未知のものにアクセスする勇気の大切さも語っています。
若いうちに旅をした方がいい。
外国語でも哲学でもいい。
まだ知らないことに手を出してみる。
それを乗り越えた時の達成感は、一生の宝物になる。
これは本当にその通りだと思います。
私は今でも、知らないものに手を出すことが好きです。
AIも、メタバースも、3Dプリンター住宅も、最初はわからないことだらけです。
でも、わからないから面白い。
わからないものを避けていたら、未来には近づけません。
批判的に構えて、最初から否定するのではなく、一度自分の中を通してみる。
苦手なもの、嫌いなもの、よくわからないものも、すぐに拒まない。
時には騙されて読むことも、間違えて進むことも大事なのだと思います。
人は間違える権利がある。
これは本当に名言だと思いました。
勉強、仕事、遊びは分けなくていい
私は以前から、勉強と仕事と遊びは、最終的には分けなくてもいいと思っています。
時間が余ったら好きなことをやろう。
退職したら勉強しよう。
余裕ができたら本を読もう。
そう考えていると、たぶん一生その時間は来ません。
仕事の中に学びがあり、学びの中に遊びがあり、遊びの中に未来の仕事のヒントがある。
写真を撮ることも、読書をすることも、旅をすることも、会社の未来を考えることとどこかでつながっています。
すぐ売上につながるわけではない。
すぐ成果が見えるわけでもない。
それでも、そういう時間の中で脳がワクワクしている。
そのワクワクこそが、本当の勉強なのだと思います。
役に立たないものが、ゆっくり発酵する
荒俣さんは、楽しい作業を繰り返すうちに、知識がワインのように発酵し、味わい深くなっていくというようなことを語っています。
この感覚は、とてもよくわかります。
すぐに役立つ知識は、すぐに使えます。
でも、すぐに古くもなります。
一方で、すぐには役に立たない読書、旅、写真、雑談、失敗、恥をかいた経験は、時間をかけて自分の中で発酵していきます。
そして、何年も経ってから、ふと仕事の判断や人との関わり方、会社の未来を考える時に効いてくる。
だから私は、これからも役に立つかどうかだけで本を選ばないようにしたいと思いました。
「なんだかわからないけど気になる」
「今の自分には難しそうだけど読んでみたい」
「何に使えるかわからないけれど面白そうだ」
その感覚を大事にしたい。
脳がワクワクして喜ぶ人生へ
すぐ役に立つものは、すぐに役に立たなくなる。
この言葉は、効率ばかりを求める今の時代への、大事な警鐘のように感じました。
人生は、すぐに答えが出るものばかりではありません。
むしろ、わからないもの、遠回りなもの、すぐには意味が見えないものの中にこそ、人生を豊かにする種があるのだと思います。
恥をかいてもいい。
間違えてもいい。
騙されて読んでもいい。
楽天的に、少し馬鹿者のように、未知のものへ手を出してみる。
賢くなければ、良い意味で馬鹿にはなれない。
そして、馬鹿になれる人ほど、人生を面白がれるのかもしれません。
脳がワクワクして喜ぶこと。
それこそが、勉強の本来の目的であり、人生を楽しくする力なのだと思います。
私も、融通無碍の海面のような脳になれたら、人生は絶対に楽しいに決まっている。
そう信じて、これからも恥をかきながら、読み、考え、発信していきたいと思います。
