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本は、終わったとは言わせない

『本を楽しむ教科書』大島梢絵 監修を読んで

本というものは、やはり不思議なものだと思います。

情報を得るだけなら、今はいくらでも方法があります。
スマホを開けば、知りたいことはすぐに出てくる。
動画もあるし、SNSもある。
わかりやすくまとめられた情報も、毎日のように流れてきます。

それでも私は、やっぱり本が好きです。

今回読んだ『本を楽しむ教科書』は、
「本を読む」ということを、もう一度やわらかく考え直させてくれる本でした。

読書は、勉強だけではない。
情報収集だけでもない。
もっと感覚的で、もっと自由で、もっと個人的なものなのだと感じました。


本は、時間を旅する道具でもある

本を読むということは、時間を遡ることでもあります。

歴史の本を読めば、過去の人たちが何を考え、何に悩み、どう生きてきたのかに触れることができます。
一方で、未来について考える本を読めば、まだ見ぬ時代のことまで想像することができます。

つまり本は、今ここにいながら、過去にも未来にも行ける道具なのだと思います。

私は普段、本を選ぶときに、そこまで真面目に構えているわけではありません。
美味しいものを食べるように、心地よい音楽を聴くように、
「なんとなく気になる」
「これは面白そうだ」
という感覚で手に取ることも多いです。

時には、これは難しそうだなと思う本にも手を出します。
すぐには読めない。
何ページか読んでは止まり、また戻ってくる。
何ヶ月もかけて、少しずつ溶かしていくような読書もあります。

それもまた、読書の楽しみ方なのだと思います。

わからない本を無理にわかろうとしなくてもいい。
ただ、そこに触れている時間そのものが、自分の中に何かを残してくれる。
そんな読書もあっていいのだと感じました。


心に刺さる一文があれば、それでいい

本の価値は、全部を理解することだけではないと思います。

たとえば、綺麗な写真を眺めていたい。
そこに短い言葉が添えられていて、その一文が心に深く残る。
それだけで、その本と出会った意味は十分にあるのではないでしょうか。

写真集でもいい。
絵本でもいい。
自然の本でも、生き物の本でも、健康の本でも、子育ての本でもいい。

自分の気持ちが少し疲れている時には、メンタルを整える本に助けられることもあります。
人間関係に悩んだ時には、どうしたら人と幸せに関われるのかを考える本が必要になることもあります。
生き方に迷った時には、どうやって生き延びていくのかを教えてくれる本もあります。

本は、自分のその時の心の状態によって、まったく違って見えます。

同じ本でも、若い時に読んだ時と、今読む時では、心に届く場所が違う。
それは、本が変わったのではなく、自分が変わったからなのだと思います。

読書とは、著者との対話であると同時に、
今の自分自身との対話でもあるのだと、改めて感じました。


紙の本と電子書籍は、別の楽しみ方でいい

よく、紙の本と電子書籍のどちらが残るのか、という話があります。

でも私は、これはどちらか一方を選ぶ話ではないと思っています。
紙の本と電子書籍は、似ているようでまったく別のものです。

電子書籍には、電子書籍の良さがあります。
場所を取らない。
移動中でも読める。
どこにいても、すぐに開ける。
これは本当に便利です。

一方で、紙の本には紙の本の良さがあります。

手に取る重さ。
ページをめくる感覚。
本棚に並んでいる姿。
ふと目に入った背表紙から、もう一度読み返したくなる感覚。

これは電子書籍とは違う、五感に近い楽しみです。

本屋さんや図書館も同じです。
目的の本を探しに行ったのに、まったく違う本に出会うことがある。
その偶然が楽しいのです。

効率だけで言えば、検索すればいいのかもしれません。
けれど、本との出会いには、効率では測れない豊かさがあります。

楽しい本屋さんがあれば、人はきっとまた足を運ぶ。
図書館にも、本屋さんにも、まだまだ役割はあると思います。


読書離れではなく、読み方が変わったのかもしれない

「若者の読書離れ」という言葉をよく聞きます。

もちろん、それは半分は事実かもしれません。
大人になるほど、仕事や生活に追われて、本を読む時間が減っていく。
スマホや動画、SNSなど、ほかのメディアに時間を使うことも増えています。

けれど、若い人たちがまったく文字に触れていないわけではないと思います。

SNSで読む。
SNSで書く。
短い文章の中で考えを伝える。
それもまた、文字を使った表現です。

本だけが読書ではない、という見方も必要なのかもしれません。

ただ、やはり本には本の深さがあります。
一つの考えをじっくり追いかける。
すぐに答えを出さずに、自分の頭で考える。
わからないものを、わからないまま抱えておく。

これは、今の時代にとても大事な力だと思います。

これから先、世の中はもっと大きく変わっていくはずです。
その時に、正解のない問題を自分の頭で考えられるか。
人の意見に流されるだけでなく、自分なりの考えを持てるか。

読書は、そのための大切な訓練にもなるのだと思います。


本は、終わったとは言わせない

この本を読んで、私は改めて思いました。

本は、まだ終わっていない。
紙の本も、電子書籍も、図書館も、本屋さんも、
形を変えながら、これからも人のそばに残っていくのだと思います。

なぜなら、人間はただ情報が欲しいだけではないからです。

知らない考えに触れたい。
自分の気持ちを言葉にしたい。
誰かの人生を少しだけ追体験したい。
今の自分にはない見方を手に入れたい。

そういう欲求がある限り、本はきっとなくならない。

私にとって読書は、情報収集ではなく、
今まで触れたことのないものの見方や価値に出会う時間です。

そして時には、自分でも気づいていなかった自分の心に出会う時間でもあります。

美味しいものを味わうように。
心地よい音楽を聴くように。
綺麗な写真を眺めるように。

これからも私は、肩に力を入れすぎず、
いろいろな本と出会っていきたいと思います。

本は、終わったとは言わせない。

むしろ、これからの時代だからこそ、
本を読むことの意味は、ますます深くなっていくのだと思います。

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