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正しさより、面白さが心に残る

やわらかく、考える

知識をためこむより、風を通すように考えたい

外山滋比古さんの『やわらかく、考える』を読んで、あらためて思ったことがあります。
それは、知識だけで物事を判断してはいけない、ということです。

本を読んでいると、どうしても「知っていること」が増えていきます。
新聞を読み、ネットを見て、AIにも聞き、情報はいくらでも入ってくる。
でも、知識が増えれば増えるほど、本当に自分で考えているのか、それとも借り物の言葉で判断しているだけなのか、わからなくなることがあります。

外山さんの本には、そういう頭の中にたまったものを、一度ゆるめてくれるような力がありました。

正しいことより、面白いことが残る

特に印象に残ったのは、
「正しいことは忘れられやすいが、面白いことは忘れられにくい」
という考え方です。

これは本当にそうだと思いました。

正論ばかり聞いていても、心には残りません。
大きな声で正しさを押しつけられると、むしろ聞く気がなくなってしまう。
テレビのコメンテーターや政治家の言葉にも、そう感じることがあります。

一方で、少し引っかかる言葉、曖昧だけれど気になる言葉、小声でつぶやかれたような言葉は、なぜか心に残ります。

文章も同じです。
全部を説明しきる文章よりも、読んだ人が「おや」と立ち止まる文章の方が、あとからじわじわ効いてくる。
私自身も、noteを書くときに、ついわかりやすく説明しようとしすぎることがあります。
でも、本当に大切なことは、説明ではなく、少し余白を残した言葉の中にあるのかもしれません。

無駄の中に、文化がある

もう一つ強く残ったのは、無駄についての話です。

会社を経営していると、どうしても無駄をなくすことを考えます。
効率化、生産性、時間短縮。
それはもちろん大事です。

でも、人間の暮らしや文化まで、全部を効率だけで見てしまうと、何か大切なものを失ってしまう気がします。

芸術も、読書も、写真も、旅も、ある意味ではすぐに役に立つものではありません。
でも、そういう一見無駄に見える時間の中から、心が動く瞬間が生まれる。
新しい発想も、自分らしい考えも、そういう余白から出てくるのだと思います。

私が写真を撮りに出かける時間も、ただの趣味と言えば趣味です。
でも、そこで見た光や風景、人の気配が、あとで仕事の考え方や文章を書く時の言葉につながることがあります。

無駄は、ただ捨てるものではない。
無駄の中に、人間らしさがある。
この本を読みながら、そんなことを考えました。

風のように本を読む

外山さんは、同じ本を何度も何度も読むより、風のように多くの本を読むことにも触れています。

人生は短い。
すべての本を深く読み込むことはできません。
ならば、風のように読んで、いろいろな考え方に触れていく。
そして、忘れていく。

忘れることは、悪いことではないのだと思います。
忘れたように見えても、何かは自分の中に残っている。
その残ったものが、経験と混ざり合って、いつか自分の言葉になる。

私も、たくさん本を読みます。
読んだそばから忘れていくことも多いです。
でも、それでいいのかもしれません。

全部を覚えておく必要はない。
大事なのは、読んだ本がどこかで自分の考えを少し変えてくれることです。
読書は、知識を増やすことだけではなく、自分が少し変身することなのだと思いました。

年を重ねるほど、借り物を手放す

若い頃は、知識を集めることが大事だったのかもしれません。
でも、年を重ねてくると、集めた知識をどう自分の経験と結びつけるかが大事になる気がします。

本に書いてあることは、あくまでも他人の考えです。
それをそのまま借りて話しても、自分の言葉にはなりません。

自分が見てきたこと。
失敗したこと。
恥をかいたこと。
苦しかったこと。
それらと本の言葉が重なった時、ようやく自分の考えになる。

知識に経験という種が加わることで、その人らしい考え方が生まれる。
そして個性は、無理に作るものではなく、いつの間にか滲み出てくるものなのだと思います。

やわらかく考えるために

この本を読んで、私は「やわらかく考える」とは、何でも受け入れることではないと思いました。
知識に縛られすぎず、正しさに固まりすぎず、少し外から眺めてみること。
そして、面白いと思う感覚を大切にすること。

旅をする。
写真を撮る。
本を読む。
人の話を聞く。
五感で感じる。
そして、ときどき忘れる。

それくらいのゆるさが、これからの自分には必要なのかもしれません。

大切なことは、大声ではなく、小声でやってくる。
正しさよりも、面白さが心に残る。
無駄に見える時間の中に、次の自分をつくる種がある。

この本は、知識を増やす本というより、頭と心に風を通してくれる本でした。

年を重ねた今だからこそ、もっとやわらかく、もっと面白く考えていきたい。
そして借り物の言葉を少しずつ手放しながら、自分の言葉で、自分のスタイルを作っていきたいと思いました。

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