「消費する快楽」から、自分に積み上がる時間へ
『読書、筋トレ、睡眠こそ最強の自己投資である』吉田裕二 著を読んで
この本のタイトルには「筋トレ」とある。
正直に言えば、私は本格的な筋トレを始めようとは思っていない。
しかし、読書と睡眠については、これまでもずっと自分の中で大きなテーマだった。
そして今回、この本を読んで改めて考えたのが、スマホやSNSとの付き合い方だった。
画面を閉じたあと、何が残るのか
スマホを開けば、次から次へと新しい情報が流れてくる。
YouTubeショート、TikTok、Instagramのリール。
新しい動画、新しい反応、新しい刺激が途切れない。
その瞬間は確かに楽しい。
しかし本書では、こうしたものを**「消費する快楽」**として捉えている。
この言葉が、とても印象に残った。
一時間スマホを見続けたあと、
「自分の中に何が残っただろう」
と考えると、案外何も思い出せないことがある。
もちろんSNSや動画が悪いわけではない。
私自身、写真や情報発信で大いに利用している。
ただ、見る側に回った瞬間、終わりのない刺激に引っ張られてしまうことがある。
その点、読書、運動、睡眠は違う。
すぐに結果は見えなくても、少しずつ自分の中に積み上がっていく。
だからこそ、この本では「自己投資」と呼んでいるのだろう。
ぼーっとする時間も必要だった
もう一つ興味深かったのが、何もしない時間についてだった。
DMN、デフォルト・モード・ネットワークという脳の働きがある。
何か特定の課題に集中していないとき、過去の記憶を整理したり、自分自身について考えたり、さまざまな情報を結びつけたりする脳活動があるという。
つまり、
ぼーっとしている=何もしていない
ではない。
むしろ、次々と刺激を入れ続けないことで、頭の中に入った情報がつながっていく時間なのかもしれない。
私は何冊もの本を同時に読む。
一冊を最初から最後まで一気に読むより、その日の気分で違う本を開くことも多い。
すると、昨日読んだ本と今日読んだ本が突然つながることがある。
まったく違う分野の本なのに、
「ああ、あの本に書いてあったことと同じではないか」
と気づく瞬間がある。
そう考えると、読書とは本を開いている時間だけではないのだろう。
何もしない余白も、読書の続きなのかもしれない。
運動は「筋トレ」でなくてもいい
運動については、この本を読んでも、やはり私は本格的な筋トレを始めようとは思わなかった。
「毎日何分」
「週何回」
「何セット」
と決めてしまうと、私の場合はだんだん義務になってしまう。
私は自宅から会社まで7、8分ほど歩く。
会社では足踏み運動をする。
家事もできるだけ自分でやる。
考えてみれば、家事だって結構体を動かす。
本書でも、運動は強度だけではなく、続けることが重要だという話が出てくる。
週に何度も頑張って一か月でやめてしまうより、無理なく長く続けた方がいい。
それなら私は、
「筋トレをしなければならない」と考えるより、「できるだけ動く」
くらいでいい。
運動を特別な予定にせず、生活の中に散らしてしまえばいいのだと思った。
紙の本は、目だけで読んでいない
非常に興味深かったのが、紙とデジタルの読書についてだった。
私はKindleもよく使う。
何冊でも持ち歩けるし、読みたいと思った瞬間に読める。
これは本当に便利である。
しかし、紙の本を読む感覚とは明らかに違う。
研究でも、紙で読んだ場合の方が、画面で読む場合より読解力がやや高くなる傾向があるという。
特に説明文や論説文では、その差が見られやすいという話も本書に出てくる。
私自身、これは実感としてよくわかる。
紙の本は目だけで読んでいるのではない。
ページをめくる。
本の厚みを感じる。
どのあたりのページに書いてあったかを、位置として覚えている。
紙の手触りがある。
ページをめくる音がある。
本には匂いもある。
そう考えると、私は紙の本を、
視覚だけでなく、触覚や聴覚、時には嗅覚まで使って読んでいる
のだと思う。
電子書籍では指一本で次のページへ進む。
それは便利である一方で、どんどん先へ進んでしまう。
紙の本には、少し立ち止まらせる力があるような気がする。
最近は、電子書籍ばかりに偏らず、紙の本もゆっくり読みたいと思うようになった。
AI時代だからこそ、200ページを読む
ここは、今の私にとって非常に重要な部分だった。
AIを使えば、一冊の本を短時間で要約することができる。
結論も教えてくれる。
論点も整理してくれる。
とても便利である。
しかし、
要約を読むことと、本を読むことは同じではない。
著者がどこから話を始めたのか。
なぜその具体例を出したのか。
どこで反論を想定したのか。
どんな順番で考えを積み上げて、最後の結論へたどり着いたのか。
200ページを読みながら、その道筋を自分の頭で追いかける。
その負荷こそが、読書の大切な部分なのだと思う。
本書には、実際にスクワットをしなければ足が強くならないのと同じように、結論だけを教えてもらっても、読書で使う頭は鍛えられない、という趣旨の話が出てくる。
これは非常にわかりやすかった。
だから私は、AIを読書の代わりにするのではなく、
読書の「入り口」と「出口」を助けてくれる道具
として使うのがいいと思っている。
本を読む。
自分で感じる。
自分なりに考える。
そして読後のばらばらな考えを、AIにも手伝ってもらいながら整理し、こうしてnoteにアウトプットする。
ここまで含めて、今の私の読書になっている。
小説は、人の心を読む練習になるのかもしれない
小説についての話も面白かった。
小説をよく読む人ほど、他人の心理状態を推測する力が高い傾向があるという研究が紹介されていた。
考えてみれば、小説を読んでいる間、私たちはずっと他人の人生の中にいる。
「なぜこの人はこんなことを言ったのだろう」
「本当は何を考えているのだろう」
「この沈黙には何があるのだろう」
書かれていない部分まで想像する。
私は若い頃、推理小説をはじめ、小説もかなり読んだ。
最近は実用書やノンフィクションが多くなり、小説を読む機会は少なくなった。
けれども、人間の機微を感じ取るという意味では、小説には実用書とはまったく違う力があるのだと思う。
もう少し小説を読んでもいいのかもしれない。
読んだ本を忘れてもいい
「読書は量より深さ」
これも本書の中で印象に残った。
10冊読んで全部忘れるより、一冊を深く読み、自分の言葉で語れる方がいい。
確かに、その通りだと思う。
ただ、私は少し違うことも考える。
私はこれまでかなり多くの本を読んできたが、その内容をすべて覚えているわけではない。
むしろ、ほとんど忘れている。
でも私は、それでいいと思っている。
忘れてしまった本まで含めて、どこかで今の自分をつくっているのではないか。
文章そのものは忘れていても、
考え方の癖として残っている。
判断の基準として残っている。
何かに迷ったとき、昔読んだ何かが無意識の中から出てくることもある。
だから私は、読了直後の感覚を大切にしたい。
何が一番意外だったか。
何に引っかかったか。
自分なら何をやってみたいと思ったか。
それをこうしてnoteに残しておく。
全文を記憶するためではない。
その時の自分が、何を感じたのかを残しておくためだ。
睡眠は「何もしない時間」ではない
そしてやはり、私が最も大切だと思ったのは睡眠である。
年齢を重ねるほど、睡眠の大切さを実感するようになった。
アルコールを飲むと、寝つきが良くなったように感じることがある。
しかし、眠りに入りやすくなることと、質の良い睡眠が取れることは同じではない。
アルコールは睡眠後半を乱したり、中途覚醒を増やしたりすることがあるという。
つまり、
「眠れた」と「回復した」は違う。
これは大切なことだと思った。
また、短い昼寝についても興味深かった。
私は時々昼寝をするが、長くても15分程度である。
短い昼寝は、その後の集中力や眠気の改善に役立つとされている。
私の場合も、少し横になるだけで頭がすっきりすることがある。
さらに本書では、睡眠中に脳内の老廃物の除去に関係すると考えられているグリンパティック系についても触れられていた。
この分野はまだ研究途中であり、すべてが完全に解明されたわけではない。
それでも、
睡眠は活動を停止している時間ではなく、次に活動するために脳と体を整えている時間
という考え方は、とてもよくわかる。
自分という「人体」で試してみる
私は、本に書いてあることを全部そのまま信じる必要はないと思っている。
研究結果も同じである。
「こういう研究がある」
「こういう人が多い」
と知ったら、自分の生活の中で無理なく試してみる。
自分には合うのか。
続けられるのか。
本当に調子が良くなるのか。
結局、自分の体と頭で確かめるしかない。
ある意味、私はいつも自分自身を使って小さな人体実験をしているようなものなのかもしれない。
だからこの本を読んでも、
「毎日必ず何分運動する」
「何ページ読む」
「何時に必ず寝る」
というように、自分をタスクで縛るつもりはない。
歩けるなら歩く。
家事で動く。
疲れたら少し昼寝をする。
スマホを閉じる時間をつくる。
紙の本をゆっくり読む。
時には何もしない。
そして、よく眠る。
そのくらいでいい。
自己投資は、何かを増やすことだけではない
「自己投資」という言葉を聞くと、
何か新しい勉強を始める。
資格を取る。
運動を始める。
もっと努力する。
そんな「足し算」を思い浮かべてしまう。
しかし今回この本を読んで、少し違うことを考えた。
何かを増やすことだけが自己投資ではない。
スマホから目を離す。
刺激を減らす。
何もしない時間をつくる。
ゆっくり本を読む。
眠る。
そうやって「消費する時間」を少し減らし、
未来の自分に積み上がる時間を増やしていく。
それも立派な自己投資なのだと思う。
私は、自分にできるところからやればいい。
無理に筋トレを始めなくてもいい。
無理に読書量を増やさなくてもいい。
完璧な睡眠を求めなくてもいい。
自分の生活の中で、少しずつ続けられることを残していく。
結局、それが一番長く続き、一番自分に積み上がっていく。
この本を読んで、私はそんなことを考えた。

