太ることは、人間が生き延びてきた証だった

『肥満の科学 ヒトはなぜ太るのか』リチャード・J・ジョンソン著/中里京子訳を読んで
私は、自分の中に疑問が生まれると、その仕組みを頭で理解したくなって本を読みます。
今回の疑問は、とても身近なものでした。
人間は、なぜ太るのだろう。
食べ過ぎれば太る。運動すれば痩せる。そんなことは誰でも知っています。
けれど、「なぜ人間の体は脂肪を蓄えようとするのか」と聞かれると、私は漠然としか理解していませんでした。
書店で『肥満の科学 ヒトはなぜ太るのか』を見つけ、これは読んでみようと思いました。
太ることは、もともと「生きるため」の仕組みだった
この本を読んで、最初に腑に落ちたのは、
脂肪を蓄えることは、人類が生き延びるために獲得してきた仕組みだった
ということです。
人類の歴史の大部分は、今のようにいつでも食べ物が手に入る時代ではありません。
食べられるときに食べる。
エネルギーを脂肪として蓄える。
そして食べ物がない時期を乗り越える。
その仕組みを持っていたからこそ、私たちの祖先は生き残れた。
本書では、この反応を何度も**「サバイバルスイッチ」**という言葉で説明しています。
ところが現代は、食料不足どころか、いつでも食べ物が手に入る時代です。
昔なら命を救ったサバイバルスイッチが、今では肥満やメタボリック症候群につながってしまう。
私はここが、この本の一番面白いところだと思いました。
肥満は、ある意味では自然の成功であり、現代人にとっては失敗にもなってしまった。
なんとも皮肉な話です。
「糖」と一言で言っても単純ではない
本書を読みながら、もう一つ勉強になったのが糖についてです。
私は「糖」と聞くと、砂糖や甘いものをまず思い浮かべていました。
しかし本書では、果糖やブドウ糖、炭水化物から体内で作られる糖など、代謝の仕組みをかなり詳しく説明しています。
特に著者が注目しているのが果糖とサバイバルスイッチの関係です。
果糖を利用して脂肪を蓄える仕組みは、本来、食料不足に備えるためには非常に優れたものだった。
ところが現代の食生活では、甘い飲料や加工食品などから糖を非常に簡単に摂取できます。
人間の体は太古の昔からそれほど変わっていないのに、食べ物を取り巻く環境だけが急激に変わってしまった。
そう考えると、「意志が弱いから太る」と単純に片づけられる話でもないように思えてきます。
空腹を、少し違って見るようになった
私はもう10年ほど昼食を食べない生活をしています。
「昼食を抜くのは体によくない」と言われることもあります。
もちろん、これが誰にでも合う方法だとは思っていません。
ただ、自分では長年続けながら体調を観察してきました。
以前は、お腹が空いていなくても、
「昼になったから食べる」
という生活でした。
しかし今では、空腹を感じても、
「体は今、蓄えているエネルギーを使おうとしているのかもしれない」
と考えられるようになりました。
そう考えると、空腹も以前ほど嫌なものではありません。
食べ始めると、もう少し、もう少しと食べたくなる。
本書を読んで、それも単なる意志の問題ではなく、人間の体に備わった仕組みと関係しているのかもしれないと思いました。
「痩せる方法」より、「自分の体を知る」
世の中には、
「これを食べれば痩せる」
「これを飲めば体重が落ちる」
「この運動をすれば大丈夫」
という情報が溢れています。
でも私は、この本を読んで逆に、簡単な答えを求めないほうがいいと思いました。
人間の体はそれほど単純ではありません。
年齢によって代謝も変わる。
食べ物も変わる。
生活習慣も変わる。
私自身、運動のためだけに特別なことをするより、家事を積極的にして日常生活の中で体を動かすようにしています。
睡眠についても、何年もアプリで記録しながら、自分の眠り方や寝具を変えて状態を観察しています。
本を読み、自分の体で確かめ、また考える。
私はこの繰り返しが好きなのだと思います。
人間の体は、まだまだわからない
『肥満の科学』を読んだからといって、「これで痩せられる方法がわかった」というわけではありません。
むしろ逆です。
人間の体は、こんなにも複雑なのか。
そう思いました。
太ることも、脂肪を蓄えることも、もともとは私たちを生かすための仕組みだった。
その仕組みを悪者にするのではなく、まず理解する。
そして、自分が何を食べ、どう動き、どう眠るのかを、自分の頭で考えていく。
食べなければ人間は生きていけません。
だからこそ私は、
「何を食べないか」だけではなく、「なぜ食べるのか、体の中で何が起きているのか」を知りながら食べたい。
この本を読んで、食べることを見る目が少し変わりました。
痩せるための本というより、
人間が何万年もかけて生き延びてきた体の仕組みを知る本。
私には、そんな一冊でした。
